昔の恋人が夢に出てきた。
もう10年も会っていない人だ。
その人は雪の積もった広場に、傘も差さないで立って、わたしを待っていた。真っ白で明るくて、だだっ広い場所だ。(具体的にどこの場所かは判らない) 後ろからたくさんの光がさしていて(レンブラント光線!)、彼の顔がはっきりとよく見えない。(だけどきちんと10年分、年齢を重ねた顔を想像できたみたい、わたしの知らない顔だった) 暖かそうなベージュのセーターにホワイトジーンズ、雪の上を歩く為のブーツ、鮮やかなブルーのマフラーをしていたけれど、こんなに寒いのに、コートも着ないで、雪国のひとは、こんなに寒さに強いのだったかしら?と、ちらりと耳を見ると、いつかのように耳が冷たさに赤く染まっていて、(あぁ、あの冬もこんなだったな)と、そっと冷たい耳に触れてみたのだった。すると彼は突然わたしをギュッと抱きしめて、耳元で「君はこんなに背が高かったんだっけな」と云うので、わたしはしっかりと目を瞑って、(あぁ、間違いない、この声だ、この人の声だ)と思うのだけれど、どうしてこんなに長い間、互いに意地を張って合わなかったんだろうなと、それぞれが思っていることが流れ込んでくるような、そんな事を思っているうちに目が醒めた。
こう云う時は、もしかしたら、相手に連絡をしてみた方がいいのかもしれない、と思うこともある。(なぜか彼の方は、たまに電話番号を変えると、わたしにショートメッセージでそれを知らせてくるのだ、それで了解したと返事をすると、もう返信はない、細い糸を、どうしてか、ただ切れないようにしているだけなんだろう) けれど、もうこのまま二度と会わないでいる方がいいのかもしれない、とも思う。今朝がたの夢のように、雪の中でふっと力を抜いて自然に話すことができるのならば、会ってお茶を飲むのもいいのかもしれない。わたしも彼も、すこしはおとなになれているはずなのだし。(あれ、それは無理か)
知り合った頃、線路をとっくに降りちゃってた小沢氏の「ある光」を一緒に聴いた、その「ある光」配信の知らせが、びっくりするほど胸をぎゅっとつまらせてくる、金曜日の昼下がりに思ったこと。
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