混沌に対抗する


「エル・フエゴ(ザ・炎)」のMVのリンクがTwitterで流れてきて、久しぶりに映像つきでこの歌を聴いたのだけれど、やっぱりこれ、すごい歌だよなぁって、毎回、思う。


骨のことを歌にしてくれていて、こればかりは聴くたびに冷静ではいられなくて、どうしても泣いてしまいそうになるのをぐっと堪えている。わたしにとって身近な骨というのは、やはり亡くなった夫の骨で、喋らなくなってしまった肉体が炎でしっかりと焼かれて、清潔な白い骨になったことが、頭できちんと分かっていても、不思議で、さみしくて、悲しかった。(今でもずっと悲しい)  8月の初めの暑い車の中で、「重いから気をつけて」と言われて膝の上に乗せた骨の入った大きな陶器の壺は、生きていた頃の肉体に比べたら当然だけど、全然重くなどなくて、寧ろ軽いぐらいで、時間をかけて焼かれた骨が、膝の上で酷く熱くて、いつもひんやりとしていたあのひとの体温が、こんなに熱かったことはただの一度もなかったことなので、そのことが可笑しくて、悲しいのに、車の中で笑いを堪えていたのを覚えているけど、こんなこともわたしが骨になるころには、忘れてしまうのかしらね。


骨が出来上がって、ひとに成って、骨と共に生きて、記憶が宿って、ずっとそばに、我々の体の中にあるのに、骨そのものはいつも見えなくて、炎で焼かれて初めて、骨に触れることが出来る、そう云う不思議を歌ってくれている歌、(と、わたしはそう思って聴いてる)  いつもずっとすごいなぁと思っている、小沢健二という作家のこと。(2021年4月21日発表から、もう2年経ったのね)





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